きもの人 エッセイコンテスト 入賞作品

準優秀賞作品 


 
 何て素敵な虎の巻

  林真理子著「着物の悦び」を読んで

                                        鳥取市 木村眞由美

 近頃は何事につけても「安・近・短」ばやりだが着物の世界は未だに「高・遠・ 長」である。
縁遠くて敷居が高い、長い歴史をしょっている、これが着物の神秘的な ところでもあるのだが、興味がありながらも踏み込めない高級料亭のような雰囲気を 醸し出している要因かもしれない。

着物の世界へのドアが開けられなくてためらって いるそこのあなた、林真理子さんの「着物の悦び」を読んではいかがだろう。

 本屋さんで見る限りでは、いわゆる着付けの本はたくさんあるけれど、どんな帯 と帯揚げを組み合わせると素敵かなどという初心者にとって一番知りたい基本中の基 本が書いてある本は少ないように思える。
この本には林氏が着物の世界に足を踏み入 れてから浸りきっていく過程で会得したノウハウや失敗談などがいっぱいつまってい る。つんとおすましした成功例ばかりでないところがますます安心感を覚えるのだ。

もちろん、初心者はこうしたらいいよというアドバイスもいっぱい。
素敵な虎の巻と いうところだろうか。

 『歌舞伎座という非日常的な空間と着物というのはとてもマッチする』 という一文が「いざ他流試合へ」の項に書かれている。歌舞伎から着物に興味を持っ た私には見逃すことのできない部分であった。確かに、お茶会などをのぞけば劇場も 着物人口密度が高いところであるに違いない。

大好きな役者さんの演目を着物で観に 行って、出待ちして一緒に写真を撮っていただくのが私が着物を着たいと思った「最 初の動機」であり「最終目標」なのである。恥をかくのがわかっていても着物通の中 に入っていくのが上達への近道らしいが、伝統芸能のしかも日常的に着物を着ている 役者さんに着物姿でお会いするのは、まだまだ修業が足りなさそうだ。

 というのも、小物と帯の色合わせがからっきしわからないということである。着物と帯は何とか選べても帯揚げと帯締めでつまづいてしまうことが多い。
そんな時に 参考になったのは「季節感でもうワンランク上げる」という項であった。
その季節の 色を一色とると季節にかなった着こなしになるというのは、年がら年中モノトーンの 洋服しか着ない自分の頭の中では考えもつかないもの。

春だったらピンクやクリー ム、新緑の色と移って行くなんて何て理にかなったものなんだと目からうろこが落ち た気分。お手本は本当に身近にある自然だったなんて。それからは外出しても山の 色、空の色、花の色が気になる私である。

 さあ、この本を読んだらまず近場から外に出かけてみましょうか!最終目標目指し て。