想い 「私にとってのきもの」

メリハリのあるライフスタイル        真奈美さん  35歳

きものは好きなものの、以前は自分で着ることも出来ず、コーディネートも人任せ。
きものを着る、きものをコーディネートする、という楽しさに目覚めたのは、箪笥に眠るきものがもったいなくて、自分で着られれば安上がり、などという安直な気持できものを着付けるようになって、自分で準備などをするようになってから。

でもそのおかげで、おそまきながらも、きものを着るとはなんて奧が深い! なんて気がついたわけですから、きっかけは何でもいいのかもしれませんね。

フルタイムの仕事をしていて、小さい子供のいる私にとって、普段は余計な労力をできるだけ惜しみたいので、着るものも、もうすっごくシンプルで、色も忙しい朝にどれをひっつかんでもいいように地味で無難なものばっかり。

でもそれだけでは人生ってなんだかつまらないって感じですよね。
ハレとケという言葉があります。これ、神様ともっと密接に共存?していた時代の考えですよね。

ハレの日はいつもよりはちょっと、あるいはぐっとオシャレをして華やかに過ごす、つまり非日常です。ただ言葉として好きなだけなのですが、私も自分のなかで自分にとってのハレとケを意識するようにしています。

メリハリのあるライフスタイルと言い換えてもいいかもしれませんけど、これがいちばん自分にしっくりとくる生活のリズムなのです。

私にとって、きものはそんなときの選択肢の一つ。
私はどうしてもきものでなければ、というふうには思っていなくて、洋服でドレスアップを考えるのも同じように好きです。

でもきものは、洋服でオシャレをするときよりずっとコーディネートのしがいがあるので楽しいのです。それはつきあうほど分かってくるきもののすてきなところ。洋服だったら自分では選ばないようなやわらかく綺麗な色も鮮やかで華やかな色も、きものならなぜだか躊躇することなく手に取ることができます。

それに合わせて行く先や目的、それに自分の雰囲気を考えながら小物を選ぶ作業ははっきりいって手間がかかりますが、それだけに納得のいく組み合わせができた時は大満足です。  

もちろんコーディネートの達人のようなレベルには遠くとどきませんけど、少ない持ち合わせの中で、アレコレ考えて、自己満足ながら自分らしく楽しんでいます。それに最近はきものの方が自分の姿形に似合うようになってきたみたいだし(笑)。そうそう加齢とともに美しさが増すのもきものの装いの威力ですよね。先々の楽しみがまだまだたくさんあるなんてほんとにすごいし、着る側としては嬉しいことです。

加えてきものを通じての人との出会い。年代を大きく越えてつきあえるし、その人の個性や人柄をきもののセンスから感じることもできて、刺激にもなります。
きものにはまるうちにみるみる綺麗になっていった仲間もたくさん目の当たりにしました。

これもよく言われることですが、どうしてか、きものには女という色を磨く力があるようです。私もそこらへんは自分に対してもとっーても期待しています(笑)。もっとも、ただ着るから綺麗になる、というわけではないのだとは思うのですが…。  

こんなふうに、私にとってのきものは選択肢のひとつでありながら、自分の世界の裾野が広がっていくような、「これから」という感じのするものです。

「きもの」というキーワードでたくさんの世界の扉が開くような感じでもあります。
きものについて知りたい知識も次々と泉のように出てきます。きものの魅力は気がつくほど深くて強くて、ぐいぐい引き込まれます。

そんなことをしているうちに、きものを通じてやってみたいことも、心密かにできたりしました。
でも焦らずゆっくりとつきあっていきたいとも思っているのです。  私にとってのきものは特別だけど、特別すぎないもの。

自分の手に余ったり身の丈を越えるようなものにしてしまって、ついて行かれなくなるのが恐いからです。少し臆病かなとも思いますが、なんでも自分というベースがあってこそと思うので。その一方で矛盾するようですがメリハリ好きな私としては、ときには「ええいっ」と思うような冒険もしてみたい(笑)。

そういうことで、わずかづつ自分も磨かれると思うので…。  これからもきものとは自分のペースで着実につき合っていくつもりですが、その時間の中で自分に合ったきものや魅力的な方々に出会って刺激を受けて、小心な自分の勇気がええいっと奮い立つ瞬間瞬間を大切にしていきたいと思っています。

心のなかにあるきものへの思いを、いざ「私にとってのきもの」として整理しようとすると、とりとめのないきものへの憧れなどの断片ばかりが浮かんできて、どれひとつ使えそうもなくて困りました(笑)。 でもそれはそれで、自分ではなんだか宝石のカケラみたいに思えたので、そのまままた元どおりしまい込んで、テーマについてはあらためて考えました。

今回テーマを決めて書く機会があったことで、なんとなく自分がきものに対してどう思っていたのか、ということが初めてわかったように思います(笑)。
自分の器量の浅さがバレバレですね(笑)。まさに自分再確認の過程でした。


今年のお正月にきものの仲間で出かけたときのものです。
きもので出かける機会はわりにあるのに、自分だけで映っていたり、全身写しているものがほとんどないのです。

一番手前のクリーム色のを着ているのが私です。