牛首紬は1反に使用する繭が約4000個、糸の長さが約3600km、全て手織で1反の織物が完成するまでに最低2ケ月を要します。
気の長くなる数字ですね。ご注文を受けたお客様には、半年以上お待ちいただなくてはなりません。
年間生産反数約6000反という数字は、デパートに常設することができません。産地としてのスケールも、もっとも小さな部類に入ります。
原料とする玉繭は、60個から1本の糸にしていくのですが、100個の繭があっても
その中に玉繭の割合は2つか3つ。
頭の痛い原料不足です。
加えて、経験と技術を要する織と染の後継者問題。
また、どんなに熟練していても手織には限界があります。
全国でも数少ない一貫作業で、繭よりから織まで最高の技術工法により作られる牛首紬ですが、
生産単数は減少気味で、ますます希少性が高くなってしまいます。
■ 公的認定
・石川県指定無形文化財(登録商標番号 NO.56−4732)
・通商産業大臣指定伝統的工芸品
■ 生地の特性
「糸に空気を含ませる独特の糸処理で、綸子のような柔らかな着心地でありながら、釘抜紬(くぎぬきつむぎ)の別名が残るほど強い織物である」
直木賞作家 高橋 治 「紺青の鈴」より
「有名だったんですよ。着物の玄人の間では。京都の呉服屋さんでは、牛首の羽織が着られるようになったら1人前といわれた時代がありました。」 直木賞作家 高橋 治 「紺青の鈴」より
大島が持つような冷ややかな鋭さはなく、結城紬が漂わせる暖かみともちょっと異なる。その中間で、凛とした張りを持ちながら、見た感じがふんわりと優しい。
(1)抜群の耐久性
他の紬と違い長繊維の糸が平行に並んでいるため、抜群の強さを有する。
(2)独特の地風と光沢
糸の性質から、紬織物と絹織物の両面の良さを持ち、独特の地風と光沢を持つ。
(3)手織特有の風合い
手織の持つ目づまりの良さと、しなやかさがあり、腰が強い。
(4)シワにならない抵抗力
弾性伸長性に優れ、シワや折れに対しての抵抗力がある。
(5)肌に合う気やすさ
保温、保湿、通気性に優れているため、冬暖かく夏涼しい。
■ 糸処理の特色
通常、紬は玉繭やくず繭を真綿にし、そこから指で糸を紡ぎだします。このため、糸の太さが不揃いになり、織り上げると素朴な味わいが出て、それが紬の特徴になります。
ところが、牛首紬は、繭を煮込んだところから直接糸を紡ぎだす「のべひき」という手法が取られるために糸は独特の風合いがでます。また更に力強く丹念に機織りされるので、堅牢さが増します。
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手前にある繭の内、小さいのが
普通の繭、大きいのが、玉繭
です。
紡がれた糸の光沢がきれいです。 |