牛首紬の先染めは、全て草木染めです。
「色が生きている」草木染めを一言で表現する言葉です。 合成染料と違って、自然の植物そのものを染料とする草木染めは、草や木の樹脂や、葉、幹の材、そして花や実、そして根を利用して2000年以上もの古い時代から、世界の衣服を染色しました。
また、草木染めは、染色した時よりも、日が経った方が良い色相になると言われます。 染料によっては、温度や湿度によって変化する場合があり、その変化が以前にもまして良いことがあるのです。
「時代がつく」といいますが、長く置けば置くほど色が良くなり、10年置けば落ち着く。20年置けばもっと良くなると言われてもいます。 また、草木染めは、糸質を傷めないという長所があります。 染色の性質上、絹の膠漆(こうしつ)セリシンを通して繊維に染めつくために、色の表面をセリシンが被っていることになり、絹本来の光沢を失わないのです。
正倉院、法隆寺などの古代の染色品が現在まで保存されてきた理由は、その保存方法もさることながら、最も重要なことは、その染色がこの草木染めだったためです。
草木染めの染料は、漢方薬に使用されているものが多くあります。寺田寅彦氏の随筆の中で、幼い頃、怪我をした時に、たもとくそ(たもと)を傷口につけた思い出が出てきます。 これは、紺絣の木綿のきものを着ていて、その藍染めの殺菌力を利用したものです。 草木染めのきものを身に付けることが、どんなに体に良いか、計り知れません。
しかし、草木染めは、大変な手間を必要とします。数十回、場合によっては百回以上も染液に浸しては乾燥する作業を繰り返します。 技術的に高度で、かつ長年の経験が必要とされます。
そうして丹念に染められた色は、繊維細胞のすべてに浸み渡り、洗えば洗うほど色は良くなります。 しかも、さまざまな条件で、まったく同じ色は2度と染められない、「一期一会」の色です。
|