京都西陣の桝屋高尾(ますやたかお)製ねん金綴錦"袋帯です。 高尾弘が、戦後、亡くなった父の後を継ぎ、17歳で織物の道へ進み、1960年に機屋・桝屋高尾を設立しました。 伯父である高尾菊次郎をはじめ、浜田庄司、河井寛次郎、黒田辰秋などとの交流の中で 正倉院の織物の研究なども手掛けるようになります。 そして1978年、弘氏にとって転機となる、徳川美術館からの依頼が舞い込みます。
徳川家伝来の"黄金のねん金袱紗”の復元依頼です。 およそ500年以上経過した袱紗は劣化が激しく、複製は困難を極めました。 本歌の袱紗、最大の特徴が"緯糸"であると確信した弘氏は、太さが不揃いの真綿糸に細かな金箔を巻き付けた"ねん金”の糸を作り出し、見事復元に成功しました。
そしてこの技術と"ねん金糸”を元に、"ねん金綴錦"を帯地として織製します。 真綿糸の自然な太細と、細い部分には隙間なく金箔が巻きつき、太い部分には箔が巻ききれなかった糸の色が表に現れます。 複雑な陰影を保ちながら、静かに輝く独自の風合いで、桝屋高尾を代表する、ねん金綴錦が生まれました。
桝屋高尾らしい、どこか異国情緒を感じる意匠に、やわらかなモダンな色彩です。 格式を保った文様と現代的な配色、それらが上手く混ざり合って、他にはない存在感を感じさせてくれます。
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