きもの美人 
初秋 No.1 2001年 (19)
 

昭和10年、T.Kさんの結婚式の写真です。
黒の振袖を着ています。
この振袖は、その後戦争中の物資が無い頃に、沢山の方にお貸しして喜ばれ、現在も大切に保管されています。

挙式の当日は、婿入りから始りました。
ご主人が、まずTさんの住むK市まで来て、T
さんのご両親に挨拶し、神社で参拝をしてから嫁家に向けて、タクシーで行列をなして行きました。

そしてそこで三々九度の杯です。
当時の典型的なお嫁入りでした。

T.Kさん

T6年生まれ。
大正、昭和、平成のほとんどをきもので通され、沢山のきものの贅を尽くされました。

この写真は、娘時代。
いつでも、すぐに出かけれるようなきちんとした格好でいなさい、とご両親に躾られました。

帯は丸帯です。
帯は広めに締めて、帯揚げも沢山出しています。 

 

T.K.さんの妹さんがS13年に結婚したときのご両親の写真です。
モーニング姿のお父さんは、工場を経営していました。

お母さんはおしゃれで普段は銘仙やメリンスを着ていました。

娘時代は、 お花、お茶、お琴、お料理と、おけいこで日が暮れました。
月に1回は観劇です。東京まで宝塚歌劇団を見に行くのが楽しみでした。
外出はいつも昼間で、夕食には必ず間に合うように帰宅しました。

 

兄嫁が嫁いできた時の祝いの品の写真です。
挙式が近づくと、男性側の家で、このように飾り付けて、婚礼を待ちました。

酒樽、緋縮緬(ひちりめん)を鯛の形に飾ったかざり台、総しぼりのちりめんの反物を飾った二見ケ浦。麻を束ねた白髪。
布団が入った布団ダンス、手前は現金が包まれたものなど。

Tさんは、桐タンスをきもので一杯にして嫁ぎました。
だんなさまのきものは、大島などの紬や丹前。

その他に半衿タンスも持参しました。
朱塗りで名物布が貼り付けてある豪華な物でした。
沢山の半衿を入れました。
大切に使い続けて、今はお化粧直しをしてお孫さんに譲られました。

化粧品も、口紅やおしろい、化粧水などを1ダース、足袋は10足組を3セット、お母様が持たせてくれました。

 

   

娘時代から、月に2回、髪結いさんが家に来てお母さんとTさんの髪をゆってくれました。特別なことが無くても、それはきまりになっていて、乙女島田(おとめしまだ)やゆうわた、桃割れなどの髪を自分の毛で結ってもらいました。
当然、枕は箱枕です。枕は、縮緬が張ってありました。

島田以外のときは、自分で束ねていましたが、火鉢でこてを温めて、髪にあて、カールを出していました。パーマはまだ無かったのです。

結婚してからは丸髷(まるまげ)も結いました。
右はお正月に丸髷をゆった写真です。
S14.5年頃、まだ第2次大戦の前ですから、こんな余裕もありました。

     (桃割れ)

      

ただ今84歳、お茶のおけいこ指導の他に、大きなセレモニーでの席主を頼まれます。
お手前を披露しているところです。

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