染色補正士の資格を持つしげさんは、染色加工の修行をした後に、昨年から家業に参加しました。 40年以上確かな腕で信頼を培ったきたお父さんに、力強い助っ人が増えて、仕事はますますフル稼働です。
全国から、 落ちないしみが救いを求めてやってきます。
取れにくいしみを取って、しっかりとした元の状態に戻す技術の追求と、 それで多くの方に喜んでいただけて、お手入れ人しげさんは仕事が 面白くて仕方有りません。
女将も、牛首紬のように大切にしたいきものを任せられる方に
出会えて嬉しいです。
右は、しげさんが住む京都の駅からの光景です。
◆まず総合診断!!
まず総合診断をします。
どの程度汚れがあるのか?
丸洗いで落ちそうなのか?
ししゅうや金箔が、丸洗いで落ちることはないのか?
何によるしみか?蛋白系のしみか、水性のしみか、など。
泥大島では、きものの色が落ちて、胴裏に色が付くことも有ります。
そんな場合は、丸洗いできませんので、代替案を出して
お客さまのご了解をいただきます。
この振袖は、(洗いのときに?)金箔がはがれ、
後から補修をした形跡ありです。
元々の箔の乗りが甘いためです。
こんなきもののお手入れは慎重にしなければなりません。
診断する確かな目が必要です。
この診断が、これまでの経験とカンが生きるときです。
◆丸洗い (クリーニング)
石油系溶剤を使って、仕立てあがりのきものを丸ごと、
右の洗濯機のような機械で洗います。
ドライクリーニングのようなものです。
普通は洗剤を入れるのですが、洗剤を入れたら生地の風合いが
落ちる場合が多いので、ここではわざわざ機械を改造して
洗剤なしで洗います。
衿や袖口の簡単なしみは手作業で落とします。
数回普通の着用の汚れであればそれで落ちますが、それでも落ちない変色や
しみは別に加工が必要です。
その後、室内で自然乾燥させます。

◆洗い張り
仕立て上がりのきものを解いて、ここで洗います。
特殊油に洗剤を使ってたわしで洗い、室内で自然乾燥させます。
油性のしみや変色したしみが洗い張りで落ちないものが
ありますので、 別途作業が必要です。
◆しみぬき
部分的なしみを取る作業です。
食べこぼしや汗じみによる黄変、かび落としなどですが、
蛋白質系のしみか油系か、経年変化かなどで処理が違ってきます。
薬品を使って何日か置いてテストもします。
しみをどこまでとるかも重要です。
頑固なしみは、なかなか手ごわいものです。
時間とお金をかけても、どうしても取るのか、そこそこでいいのか、
お客さまのご要望をしっかりお聞きすることも重要です。
 
袖についた口紅です。超音波洗浄機で洗い、ベンジンとシンナーで落とした後、
シンナー用液体洗剤を付けて完全に取れました。
ドライヤー乾燥です。
◆地直し・黄変抜き
黄変とは、食べこぼしや酒のしみ、汗じみなど、付着した際にはほとんど気づかなかったものが
生地に残留していた糖分・塩分などの経年変化によって変色を起こしたもので、生地の地色とは関係なく、 全黄茶色になったしみの事です。
作業内容は、漂白の後に色かけなどをして元の色に戻します。
◆金加工・柄足し・刺繍直し
古くて傷んだ金や刺繍などを補正します。
また、生地が弱っているなどで、しみ抜きできないしみなどを
隠すために金加工や柄足しも行います。
派手になった柄を地味にすることも出来ます。
◆プレス(アイロンかけ)

きものは、丸洗いすることや、空中の水分で、縮むものがあります。
このプレス機は空気を出して下から上にきものを吹き上げるので、その広がった状態でプレスし、またスイッチを切り替えて、水蒸気を吸い取ることができます。
縮みを伸ばしてプレス仕上げする有能な助っ人です。

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