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女将 女将奮闘記
サイト開設までの経緯編 vol.10
澤屋重兵衛さん
牛首紬に出合ったその日に、もう1つの出会いがありました。
澤屋重兵衛さんという西陣の帯屋さんです。
催事場で、「素敵な色だな」と目を引いて近寄ると、ぼかしの 色無地や訪問着が、テーマ毎に作られているという感じで 並べられていました。 ぼかしが入った色無地が、色としてとっても素敵です。 煉瓦色、灰色、さびえび茶色等の深みがある色が、目立たないん だけど、比類ない暖かさと贅沢な心地よさを与えてくれました。

もちろん生地も良かったのですが、色でここまで出る仕事を なさるのはすごいなと、私は感心してしまいました。 重兵衛さんの作品は従来の豪華絢爛とか花鳥風月とかと対極にある、洋服的な感覚の作品です。

そのままワンピースに 仕立て上げて使えそうな色やデザインです。つまりモダン。
こんなきものが好きだなと私は漠然と思いました。 重兵衛さんの作品は、着た時に力があり、これは牛首紬と共通のものだと思いました。 生命力があるのです。

そして この時、アドバイザーとして重兵衛さんの作品の解説とか着こなしのアドバイスをして下さったのが酒井美登里先生です。 酒井先生は、初めはフツーの方と思ってお話していたんですが、そのうちに「おやっ」と思うような方でした。

まず、私に似合うきものや帯を1つしか持って来ない。 ところがそれが、ぴったり似合ってしまうんです。 でもそれでは不満で、「あっちの色は?」とか 「こっちは?」なんで言って色々当てていただくのだけれど、やっぱり最初のものが一番良いんです。

それから、技術的なことをきちんと丁寧に説明して下さるし、好みを押し付けない。 ご自分が経験したきものの生活のことを さり気なくお話下さって、その中身が面白いんです。 「海外のパーティーで、きものだとVIP扱いよ」と、 海外旅行のお話をして下さって、何だかすがすがしい感じを 与える方だなと思いました。

その場で、私は重兵衛さんの狩倉更紗という帯を1本買いました。 30万円以上して、かなりの買い物でしたが、「これは間違いない」と 思える度胸と自信がありました。(笑) その後、その帯は、電車の中で見知らない方に肩をたたかれて、 「こんなすごい帯は見たことがないわ。一生忘れないわ」と言っていただけるなど、力を発揮してくれています。

同じ日に牛首紬と澤屋重兵衛さん、酒井美登里先生との 出会いがあり、その日は今考えると記念すべき6月9日でした。 その後、牛首紬、澤屋重兵衛さん、酒井美登里先生を さがす日々が始まります。

 

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